与論島便りvol.55
- 投稿日:2019年03月
春の息吹
如月、20℃半ばの陽気のせいなのか、いつもの散歩道を歩く自分の肩が起伏しているのが分かる。
しばらく進むと、道路沿いに面したサトウキビ畑が見えてきた。
収穫を終えたばかりの様子だが、農家の汗が染み込んだ畑には、すでに新芽の力強い息吹が感じられた。
繰り返される世代交代は、一度の植え付けで三度収穫(年1の収穫)を得る事が出来るらしい。
四季の移り変わり、生命の狭間に立ち垣間見たと感じたわたしは、
この小さな島の小さな春を探すことにした。
沿道の花壇にふと近づくとマリーゴールドの良い香りがした。
近々、子ども会の花壇コンクールがあり、集落の花壇には色とりどりの花が咲きめぐる。その空間からは、親子で植え付けを行う姿や草抜きをする姿が目に浮かび、楽しそうな笑い声が聞こえるようであった。
いつの間にか随分と歩いたので、少し休もうと隅にあるベンチに腰かけると、抜群のアングルから寒緋桜を眺める事ができた。ひとときの間うっとりとしていると思わずキュッといきたくなったが、まだ時間が早い。
何かを思い立ったかの様にスッと立ち上がった帰り道、菜の花畑では「衣を装う姿」を思い浮かべたが、家はまだ遠い。
自然と腕を振る力が強くなり、歩幅が広がっているのがよく分かった。
もう家はすぐそこだが、周りの草々とは異なる何やら不思議な植物が目に付いた。よく見るとそれはソテツの新芽で あった。
なんだか愛くるしいその風姿からは、ソテツ特有の刺々しさは全くなく、柔らかくて淡い春の息吹を感じた。
Vol.56に続く